猫のスプレー行動、特に室内でのスプレーによる汚れと臭いに困っているという相談を良く受けます。
まずはそれが本当にスプレー行動なのか、他の不適切な排尿と区別することが必要です。
違いは猫の姿勢、場所、量などです。典型的なスプレー行動は、起立したまま、垂直面に、少量の尿を噴出します。猫ちゃんが、立ったまま尾を立て震わせながら、同時に足踏みしながら、壁におしっこを引っ掛けているなら、それはスプレー行動に間違いないでしょう。終わった後も通常の排尿後のように足で引っ掻くしぐさを見せず、排尿時には本来のトイレも使用します。
オスの猫ちゃんに多いですが、特に発情期はメスの猫ちゃんでもよく見られます。また、まれに対象が水平なものであったり(通常の排尿跡と違い、跡が長細く残る)、特定の個人のもの(不仲の場合が多い)である場合もあります。
スプレー行動は、主に社会的コミニュケーションの一手段として行われます。匂いと視覚的なメッセージを残すことで、存在、縄張り、性別、発情ステージ等の個体情報を示します。それにより、猫同士が互いの距離や繁殖活動を調節する為です。
またスプレー行動は不安など情緒面にも強く関連しており、同居猫や屋外の猫との対立関係、外出制限、飼主との不仲、環境の変化など、様々なストレス下ではスプレー行動が増加することが知られています。
対象となるものは家具、壁、窓が多く、特に外が見える場所や部屋の入り口付近に多い傾向があります。目新しいものもターゲットとなり易いでしょう。
一般に飼育頭数が多いほどスプレー行動は発生しやすいのですが、単独飼育の猫でも問題が深刻化する場合があります。
上記の通り、スプレー行動は猫の自然な行動の一部と言えます。しかしながら、人間社会で暮らす上では、特に室内での過剰なスプレー行動は、やはり迷惑行動となりますし、スプレー行動が急に増加した場合は、猫ちゃんに新たな不安が生じていないか等、原因を考えてやらないといけません。
基本的な対処法および治療法は、
- (1)去勢や避妊処置により、縄張りや繁殖活動に対する猫自身の反応力を小さくする。
- (2) 仲の悪い猫と部屋を分けるなど、猫が反応する刺激や原因となるものの排除や隔離。
- (3) 屋外からの刺激を減らすため窓を塞ぐ、スプレー場所近くに食器を置く、快適なトイレを増やすなど飼育環境の改善。
- (4)長時間の留守番、閉じ込め、体罰など飼育状況に問題がある場合はその改善。
これらを組み合わせて行うことになります。
特にオス猫の場合、(1)の去勢による効果は90%近いと言われており、雌猫も避妊により発情に関連するものはほぼ消失するため、交配希望がない場合、去勢や避妊はお勧めです。
そして原因が明らかなら、(2)のそれを排除もしくは隔離することが重要です。同居猫との住み分け、庭からの外猫の排除はかなり有効なことがあります。
(3)の環境の改善ですが、(2)と関連し、外猫の刺激がある場合は庭に入れないよう工夫する、見えないよう窓を塞ぐことも有用です。
またスプレー場所が固定されてる場合、匂いが残ると繰り返しスプレーされやすい為、その場所の徹底的な臭い取りをして下さい。トイレ(尿の匂いがする場所)と食事場所を分ける猫の習性を利用し、その近くに食器を置くことも試みるとよいでしょう。多頭飼育の場合、トイレの増設も一定の効果があります。
(4)の飼育状況に問題がある場合、ネコちゃんのストレスが減るように、できるだけ状況の改善を心がけましょう。体罰は禁忌です。特定の家族との不仲がある場合は、関係修復のため、その方が食事係りになると良いでしょう。
以上の基本的な対応をされても十分な改善が見られない場合は、動物病院の受診をお勧めします。場合により薬物使用や専門的な行動療法などを考慮する必要があったり、また基礎疾患が見つかるケースもあります。
今回は、ご相談をうけることが多い猫ちゃんのスプレー行動についてお話しました。縄張り、繁殖活動などに加え、ストレスが大きな要因となります。人間も、猫も、なるべくストレスがない生活・・送りたいですね!(獣医師 小崎美紀)
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